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「生活保護なめんな」ジャンパー問題から1年半。  ジャンパーを作りたくなる気持ちもわかります。

区、市役所の話

「保護なめんな」「生活保護悪撲滅チーム」――。ローマ字と英語で書かれたジャンパーを羽織って、生活保護受給者宅を訪問する。2007年から約10年にわたって神奈川県小田原市の職員が着用していたものだ。

 2017年1月に問題が発覚し、職員の対応は「受給者を威圧する」と批判された。市は改善を宣言する。あれから1年半、小田原市の生活保護行政は大きな変化を遂げていた。

以下記事全文

「生活保護なめんな」ジャンパー問題から1年半、小田原市が進めた生保改革(石戸諭) - エキスパート - Yahoo!ニュース
 「保護なめんな」「生活保護悪撲滅チーム」――。ローマ字と英語で書かれたジャンパーを羽織って、生活保護受給者宅を訪問する。2007年から約10年にわたって神奈川県小田原市の職員が着用していたものだ。 

 

当時はテレビで連日のように放送していました。

私のいた役所でも同様にこういったものを係内などで独自につくっていないか、全部署で確認するように指示があったようです。

 

こういったジャンパーを作る気持ちは正直ある程度は理解できます。

「現場の士気を上げるため」という理由は急ごしらえかもしれませんが、実際に着用することで「不正受給は許さない!」という気持ちもわいてきたのかもしれません。

しかし、だからといって作って、それを実際に着用し、まして訪問するのはありえない行為です。

 

そのジャンパー問題から1年半。小田原市の行った生保改革とはどういったものなのでしょうか。

記事であげられている4点について解説していきたいと思います。

1.職員数の増加

「社会福祉士の数を拡充し、ケースワーカーの数を増員した結果、1人で91・3世帯であったのが、81・3世帯まで減少。」

単純ではありますが、目に見えて効果が上がっています。

担当ケースが90から80に減少というのは、少しの割合かもしれませんが、それでもケースワーカーの負担軽減となり、より細やかなケースワークに繋がります。

「人員増」と言うだけなら簡単ですが、生活保護部署はその性質から増員がなかなかされにくい部署です。

 

小田原市生活保護の状況によると平成28年で29人のケースワーカーとの報告があるため、総世帯数は逆算すると2647世帯。

2647世帯÷81.3=32.5人のため、3~4人の人員増を実行したことになります。

なんだ、たったの3,4人か。と思うかもしれませんが一つの部署で10%の増はなかなか実行できるものではありません。

 

2.申請から決定までの時間短縮

「保護申請から決定まで7割が2週間以上かかっていたのを改善。その結果約90%が2週間以内に決定を出せるように。」

 

そもそもの2週間という基準ですが、これには理由があります。

 

生活保護法第24条に

「申請があった日から14日以内に保護の要否通知を行わなければならない。」

と記載があるため、原則としては申請から14日以内に保護の可否を通知しなければいけません

ですが、実は14日を過ぎてもかまいません

なぜかというと

「ただし、扶養義務者の資産および収入の状況調査に日時を要する場合は30日まで延ばすことができる。」

と同じく生活保護法第24条に記載があるからです。

 

個人的には必ずしも14日以内に保護を開始する必要はないと思っています。

 

明らかに現状、全くお金がなく居住地もない、生命の危機にある状態などであれば早急な保護決定はもちろん必要です。

 

ただ、申請に来られる方で実際にそんな状況の方は少なく、

「1か月程度ならなんとか生活できる。」

もしくは

「先に社会福祉協議会から少し貸付を受けて、保護決定ができるまで生活ができる。」

といった方が多いです。

 

正直、14日以内に保護を決定することを優先するかどうかは福祉事務所次第です。

「30日ぎりぎりまでかかっても、調査をしっかり行う。」

という福祉事務所もあれば

「そんな悠長なことをしていたらうちは仕事が回らない。まずは保護を決定して、不正が発覚すれば保護費を返してもらう。」

という方針の福祉事務所もあるため、一概に早いことが良いとは限りません。

 

実際に記事の中で

 

まず申請を受けて保護をしてから、細かい状況を調べればいいという方針になりました

 

とあるため、前者から後者に方向転換をしたのだと思われます。

 

3.生活保護のしおり の見直し

小田原市 生活保護のしおり

を見ますとわかる通り、非常に見やすく、わかりやすく、丁寧に作られています。

申請に対してハードルを上げないように、申請者目線で文章が作られています。

 

特に収入申告の説明については、よく問題にあがる「高校生のアルバイト収入」についても書かれており、良い出来になっていると思います。

 

 

4.自立支援への動き

これに関しては記事中でほんの少ししか書かれていません。

 

「重要だったのは自立支援だ。組織目標としてこれを掲げ、地域と協力して、利用者の状況に応じて農作業などに参加できる仕組みを整えた。自宅以外に社会との接点を作ることも、社会参加に向けた重要な「支援」だ。」

 

とのことですので、地域社会との交流について網を広げたということでしょう。

 

一般就労が難しい保護者のために、その能力にあった就労場所を探し、マッチングさせるのも福祉事務所の仕事の一つです。

 

 

 

 

 

 

1年半という短い日にちで大きく目に見える成果を上げる事はなかなかできません。

 

特に役所は良い意味でも悪い意味でも変化を嫌います

 

ジャンパー問題に対して、逃げ回らずに会見を行い、どう改善していけばいいかを考え、実行に移した小田原市福祉事務所は素晴らしいと思います。

 

起こした問題については小さくはないため、これからもジャンパー問題については生活保護の話題が出るたびに取り上げられるとは思いますが、そこからどう改善したかも一緒に取り上げてほしいものですね。

 

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