先月、札幌市のマンションで熱中症で死亡した66歳の女性について、生活保護の受給者だったのに、市が行うべき定期的な訪問をしていなかったことがわかりました。市は「計画どおり訪問していれば、異変に気付けた可能性がある」とコメントしています。
以下全文
7月29日に札幌にて66歳女性の生活保護受給者が熱中症で亡くなったとのニュースがありました。
記事によると、電気代が止められており冷房器具が使えない状態だったようです。
しかし、ケースワーカーも業務の多忙により定期的な訪問ができていなかったとのことで、「計画通り訪問できていれば異変に気付けた可能性もある。」と市のコメントが出ています。
定期訪問はどれぐらいの頻度なのか
基本的に訪問については「訪問レベル(ランク)」が一定の基準で設けられています。
〇レベルA 1か月毎
→保護開始から3か月は基本的に毎月の訪問と定められています。その後、B~Gに変更される形です。それ以外にAになる時は、「よほどのレベルで何かトラブル等を起こした際」くらいですが私の時は査察指導員時代も含めてイレギュラーなAは幸いにもありませんでした。
〇レベルB 2か月毎
→要就労支援の受給者、もしくは引きこもりなど積極的にケースワーカーの介入が必要とされた場合に設定されます。レベルAほどではないけどトラブルを良く起こすし、要注意だな。なんて人に設定することもあります。
〇レベルC 3か月毎
→だいたいがこれぐらいの頻度が多いです。というのも、単身で生活している高齢受給者はほとんど3か月毎の訪問と定められているためです。受給者の割合も大半が高齢者を占めているため、自然と「3か月毎」の担当ケースが多くなります。また、就労している保護受給者も大体は3か月毎に設定されます。
〇レベルD 4か月毎
→高齢者世帯で2人で住んでいる場合などは4か月毎に設定することがあります。障害等で働けない受給者の方についても同様です。
〇レベルE 6か月毎
→施設に入っている高齢者や、恒常的に介護サービス等による他者の見守りがあるケース、病院に長期入院しているケースなどが設定されます。ケースワーカーが細かく訪問をしなくても、常に周りの人によって状態がほぼ把握されているため、こういった状況では6か月毎の訪問が基本です。
〇レベルF 12か月毎
→一応、訪問計画には設定の一つとして存在はしていますが12か月毎に設定したことは一度もありませんし、設定させたこともありません。
訪問計画票通りに訪問するのは難しい
1人のケースワーカーが抱えるケースは大体90~110くらいです。
その全てのケースにたいして一つ一つ訪問レベルを設定し、その頻度に従って訪問をし、その時その時の状況、状態について傾聴、確認しケース記録を作成します。
しかし、この訪問については計画どおりに回れないことが少なくはないです。
やはり理由としては、ドラマでもあったようにイレギュラーな事が本当に多発します。
一つ一つに対して細かく対応していけばどうということはないレベルのものが大半ですが、対応するにもやはり時間をとられてしまうため
「よし、今日はAさんとBさんと、あと家が近いからCさんDさんも回ろう!」
と意気込んでいても、途中でイレギュラーな電話呼び出しがあったりして、計画通り回れないなんてことはザラです。
最悪やむを得ない場合は対象ケースの家に訪問し、出会ったことにして、それっぽくケース記録を作るという行為があったりするとかしないとか…。あまり大きな声では言えませんね。
それが、今回の札幌であったように、3か月毎の訪問ができていなかったという事に繋がってしまたのかなと思います。
3か月の訪問をすれば66歳女性は亡くならなかった?
個人的には訪問があろうがなかろうが亡くなっていたと思います。
だって、電気が止まっているんですから。
生活保護費の中に「電気代」ももちろん込みで支給がされています。
それにもかかわらず電気が止められるということは、保護費の目的外使用にあたります。
確かに3か月毎の訪問をしていれば、電気が止まっていること気づき、電気代を支払うよう注意したかもしれません。
ですが、こういうケースの人は注意されたとしても、自分の生活よりも別の事(具体的に何かとは言いませんが)に保護費を結局は使ってしまう傾向がとても強いです。
注意をしたとしても、来年、再来年同じことがおこっていたと私は思います。
多数にわたる訪問業務は基本にして、大変な業務です。
直接的な改善方法としては、ケースワーカーの増加、もしくは保護数の減少が最も効果がありますが、そうも簡単にいかないのが現状です。
イレギュラーに負けず、根気よく訪問し、傾聴していきましょう。
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