実際にあったケースの例です。
単身者 Tさんのケース
Tさんは単身で生活保護の申請にこられました。
昔は仕事もしており、妻、娘3人で生活をしていたとのこと。
当時は勤めていた会社も景気が良く、給与も他と比べればぐんと多かったため、妻と娘には何不自由ない生活をさせていたそうです。
Tさんが言うには
「娘にはそれぞれマンションを買うときにだいぶ援助をした。車も最初の1台はみんなに買ってあげた。」
とのことでした。
ところがある日、妻と娘3人が急にTさんのもとを離れたというのです。
Tさんはその理由については
「自分の稼ぎが悪くなったからだと思う。」
と語っていました。
Tさんからの生活保護申請、調査してわかってきたこと
さて、生活保護申請が出たため調査をすることになりました。
資産調査の結果、特に預金や土地、車などはなく困窮状態とのこと。
扶養義務調査のために戸籍を追っていたところ、妙な事が判明しました。
判明した娘の住所に何度もいつ訪問しても娘がいません。ポストに連絡が欲しいとの手紙もいれましたが応答がありませんでした。
この時に初めて「やはり何かあるな」と若輩者なりに気づいた記憶があります。
幸い、妻(戸籍上離婚していなかったため、扶養義務あり)の住所はわかりましたが、遠方であったため郵送にて扶養義務調査書を送りました。
するとすぐに返事は返ってきました。
そこには、こう書かれていました。
「長年、経済的なDVを受けており、娘ともども逃げるように離れた次第です。到底援助は無理です。」
実際は、裕福な生活などではなく、仕事で得た収入はほとんど自分で使ってしまい、家庭にはほとんどいれなかったとのことです。
Tさんにそのことを確認すべきかどうか。
妻からの回答について住所については「決して教えないでください。」と書かれていたため、それについて了承するとともに、まだ婚姻関係があり、Tさんが妻の住所を調べることが可能な状態であるため、戸籍の閲覧制限をかけるなどをするように助言をしました。
最後に福祉事務所内でのケース診断会議にて、「Tさんにその事実を確認するべきかどうか」についてだいぶ検討しました。
結局は、実際に離散してからかなり期間がたっていたこと等から、Tさんには確認しない方向になりました。
最初こそ「一度、妻と娘に会って援助(例えば同居など)ができないか、強くお願いする必要がある。うまくいけば円満に解決できる!」と思っていましたが、そう上手くはいきませんでした。
むしろ、妻の住所がわかった時に良かれと思い
「手紙では回答にも時間がかかるし、Tさんを連れて直接話してみてはどうか。」
などと考えていたことすら、今となっては恐ろしく思います。
(結局は当時の上司に止められました。大正解ですね。)
ここまで書いておいて、実は妻と娘が嘘をついていた可能性も否定はできないです。
実際、Tさんは当時で齢70半ばも超えていましたが、とても丁寧で、物腰も柔らかく、とても昔経済的なDVをしていたような感じには見えませんでしたからね…。
私はこのケースで「90%信じ、10%疑う」という事を覚えました。
生活保護には本当に色々な事件、ドラマがあります。
今後もこういった特殊なケースについては記事にしていきたいですね。
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