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同一の世帯でも、世帯分離を適用すれば特定の人物だけ保護を受けることができる。

世帯認定

前の記事(家族の中で特定の人物だけ生活保護を受けることができるのか)

では難しいと書きましたが、実は同居していても特定の人物のみ保護を受けることは可能です。

 

それは「世帯分離」の認定を受けることです。

この認定を受けることができれば、生計が同一であっても、特定の人物のみ生保受給が可能です。

では、この「世帯分離」はどのような状況で認められるのか生活保護手帳から一部抜粋をして解説しましょう。

 

(1)世帯員のうちに、稼働能力があるにもかかわらず収入を得るための努力をしない等保護の要件を欠くものがあるが、他の世帯員が真にやむを得ない事情によって保護を要する状態にある場合。

前の記事では難しいとありましたが「真にやむを得ない事情」があれば世帯分離も認めるということがありえそうです。…が、少なくとも私の福祉事務所ではこれで認めたということは滅多にありませんでした。私の記事を見て、ほら、世帯分離で認めることができるでしょう!と面談の際に言ったとしても真にやむを得ない事情がなければ当然通ることもありません。あしからず。

 

(2)要保護者が自己に対し生活保持義務関係にある者がいない世帯に転入した場合であって、同一世帯として認定することが適当でないとき(直系血族の世帯に転入した場合であっては、世帯分離を行わないとすれば、その世帯が用保護世帯となるときに限る。)

例えば独居老人(要保護者)が認知症で生活が難しくなり、急きょ甥夫婦の家に転がり込んできた。なんて場合があげられると思います。この場合ですと甥に生活保持義務関係はないため、世帯分離を認め、要保護者のみが保護を受けられる可能性が高いです。しかし、金銭面は福祉事務所がカバーしてくれますが、生活面では一緒に住んでいる以上、甥夫婦が協力しなければなりません。

また、甥夫婦が望んで受け入れた場合などについては援助する意思があるとみなされ、同一生計と判断することもあります。

※生活保持義務関係は未成熟の子、配偶者がそれにあたります。

 

(7)同一世帯員のいずれかに対し生活保持義務関係にない者が収入を得ている場合であって、結婚、転職等のため1年以内において自立し同一世帯に属さないようになると認められるとき

生活保護を受けている家庭で、子が高校を卒業し働き始めた場合などがこれにあたります。通常は働きだした子の給与については世帯収入に含まれるため、子が稼いだ分のお金は一部を控除した上で生活保護費から差し引かれることとなります。しかし、既に子は未成熟の子ではないため、生活保護義務関係にあらず、また結婚や仕事で1年以内に家を出ていくということが確実である場合は世帯分離を認め、子は自身の収入のみで生活できるとし、親のみが継続して保護を受けることが可能です。

 

また、生業扶助の対象とならない専修学校又は各種学校(大学など)に就学する場合であって、その就学が特に世帯の自立助長に効果的であると認められる場合は、世帯分離を認められることがあります。

その場合、大学にかかる費用については奨学金や就学中のアルバイト等で賄わなければなりません。昔は認められるものではなかったそうですが、昨今は高卒のみではなかなか良い就職口につくことはできないため、当然の時代の流れかと感じます。

 

また、世帯分離は「世帯単位の原則をつらぬくとかえって法の目的を実現できないと認められる場合に、例外的に認められる取り扱いであることから、世帯分離要件は、世帯分離を行う時点だけでなく、保護継続中も常に満たされてなければならないものである。」と生活保護手帳で示されているように、年に1回程度、当初の要件が満たされているか確認されます。

そのため、もし確認の際に「大学に進学のため世帯分離を適用していましたが、実はすでに辞めており、アルバイトをしていました。」ということが分かった場合、遡って世帯分離を解除されます。また、最悪の場合、アルバイト代を申告していなかった(不正受給状態)としてアルバイト代を福祉事務所に返還しなければならないこともあります。また、遡って生活保護世帯員と認められ支給されることもあります。

そのため、世帯分離の状態が変わった、家庭環境に変化があった場合は必ずすぐに福祉事務所の担当ケースワーカーに連絡をしてください。

 

原則的に生活保護については世帯を原則として判断をするため、生活保護手帳に記載があるからといって、おいそれと認められるものではないことを理解してください。事実、世帯分離については福祉事務所によってかなり厳しく取り扱うことがあります。これは世帯分離が乱発されてしまうと、生活保護に対するハードルが今以上に下がり、ケースワーカーの手が足りず、真に生活保護が必要な人に対してまで十分な支援ができなくなるからです。

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