右も左もわからないケースワーカー1年目の時に、私に色々と教えてくださったのが
当時ケースワーカー経験4年目であったS先輩でした。
S先輩は民間で数年働いた後に役所に入庁した「中途採用組」でした。
S先輩のスキルは高くケースワーク1つ1つの動き方が適格で
面談も「Sが面談に入ればどんな面談も安心できる」とまで言わしめるほどでした。
私もそんなS先輩に憧れ、尊敬し、そのケースワークの技術を必死で盗んでいました。
以前の記事でもS先輩について書かせてもらっています。
まるでドラマのような先輩ケースワーカーの鋭い目線
是非見ていただければと思います。
S先輩のケースワーク列伝~こいつにお酒は飲ませない~
そんなS先輩が持っていたケースの一つに「アルコール依存」ケースがありました。
まず最初に断酒会という「アルコール依存症からの回復者の集い」に保護者を参加させました。
しかし、その断酒会も長く続かず、アルコール飲酒もやめられませんでした。
次にアルコール依存治療のために、保護者を専門の病院に入院させ、治療をしましたが
1週間も経たずに病院から自宅に逃げ出し、治療途中で退院となりました。
そこでS先輩はアルコール依存の保護者に言いました。
「今日から僕が別の部署に行くまで
抗酒薬を毎朝ここ(福祉事務所)にきて飲もう。」
※抗酒薬=服用中にアルコールを接種した場合、「悪心・嘔吐」「頭痛」「動悸」「顔面紅潮」「呼吸困難」などの不快な状態になる薬。これにより「お酒を飲んでも気持ち悪くなるだけだからやめよう」と思わせ、心理的に断酒がしやすくなる効果がある。
それは厳しいで と保護者は最初首を横に振ってしましたが、最終的にはアルコールを辞めた後の
計画や、S先輩の熱意に押され「仕方ないなぁ」と同意していました。
その日から保護者はずっと朝に窓口を訪れ、S先輩と面談室に行き抗酒薬を飲む日々が続きました。
最初の数週間は土日もS先輩はこのためだけに出勤し、抗酒薬を飲むのを確認していました。
そしてついにはアルコール依存から脱却し、就労ができ、恒常的な収入の増加により保護廃止になりました。
S先輩は「僕がやったのは抗酒薬を飲む手伝いをしただけ。」とさらりと言ってましたが
言うは易し、行うは難しを地で行くケースワークだったなと今でも思います。
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